ラティアの月光宝花
イエルドとは、ラティア帝国の軍事最高司令官で、亡き父王ロー・ラティアがレイゲン・ドゥレイヴ同様に絶大な信頼をおいていた人物である。
部隊ごとに存在する軍師達の練る策をもとに、戦場で指揮を執るのが軍事最高司令官の仕事で、イエルドは兵士の士気を上げ軍をまとめ上げる才能に秀でていた。
「セシーリア。ラバトの弟に書簡を書け。腕によりをかけて内戦を誘うぞ」
「うん!」
セシーリアは構想を描き、それを書面にしたためるべく考えを巡らせた。
ふたりの読みが正しければもはやルアス帝国は張りぼてにすぎない。
もしかしたら友軍もルアス帝国の兵の少なさに気付き、不安を抱き始めているかもしれない。
もしも読みが当たったとしたら。
ルアス帝国王弟の心をどれだけ掴めるかが勝利を引き寄せる鍵となる。
先代の皇帝……遺言をねじ曲げられたと思わせ、同情して心情を手中におさめるのも作戦の一つである。
セシーリアは眼を閉じると一つ深呼吸をした。
****
その時は程なくしてやってきた。
「喜べ、セシーリア。ルアスの王弟から良い返事だ」
マルケルスと最高司令官イエルドは、ルアス帝国の王弟に接触を計り、僅か半日で現皇帝ラバトを討つ決意をさせた。
セシーリア達の読みは当たり、互いの利害が巧く一致したのである。
部隊ごとに存在する軍師達の練る策をもとに、戦場で指揮を執るのが軍事最高司令官の仕事で、イエルドは兵士の士気を上げ軍をまとめ上げる才能に秀でていた。
「セシーリア。ラバトの弟に書簡を書け。腕によりをかけて内戦を誘うぞ」
「うん!」
セシーリアは構想を描き、それを書面にしたためるべく考えを巡らせた。
ふたりの読みが正しければもはやルアス帝国は張りぼてにすぎない。
もしかしたら友軍もルアス帝国の兵の少なさに気付き、不安を抱き始めているかもしれない。
もしも読みが当たったとしたら。
ルアス帝国王弟の心をどれだけ掴めるかが勝利を引き寄せる鍵となる。
先代の皇帝……遺言をねじ曲げられたと思わせ、同情して心情を手中におさめるのも作戦の一つである。
セシーリアは眼を閉じると一つ深呼吸をした。
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その時は程なくしてやってきた。
「喜べ、セシーリア。ルアスの王弟から良い返事だ」
マルケルスと最高司令官イエルドは、ルアス帝国の王弟に接触を計り、僅か半日で現皇帝ラバトを討つ決意をさせた。
セシーリア達の読みは当たり、互いの利害が巧く一致したのである。