ラティアの月光宝花
「おい、セシーリア」

「行くわよ、シーグル」

シーグルが参ったという風に頭を振り、再び溜め息をつく。

「待て、女王の護衛兵よ」

「あー?」

護衛兵と呼ばれて思わずムッとしたが、ルルドはれっきとした皇族であり、そう呼ばれても仕方がないとシーグルは思い直した。

「なんだよ、ガキ」

シーグルが肩越しに振り返ってルルドを見ると、彼は『ガキ』と呼ばれて腹を立てる様子もなく、シーグルに問いかけた。

「女王の言葉は……誠か?本当に私がこのラティアを取れば……私は愛されるのか」

「……」

まだあどけない顔立ちから発せられるその言葉に、シーグルは僅かに目を細めた。

この眼は……見覚えがあった。この眼は……そうだ。

セシーリアだ。セシーリアは昔から時折こんな眼をしていた。

本人は気付いていないかもしれないが……。

いや。ルルドの命を助け、第二の人生を与えようとするのだからどこか自分と重なって見えているのかもしれない。

シーグルは小さく息をつくと牢の中に入り、ルルドに向き直った。

「アイツは嘘なんかつかない。お前次第だよ、ルルド王子。あ、そうだ。もしもお前が明日ラティアに生まれたら」
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