ラティアの月光宝花
ルルドが恐る恐る問う。
「……生まれたら……?」
子供らしい一面に、シーグルの唇に笑みが浮かぶ。
「明日、お前がもしもラティアに生まれたら、お前は俺の弟だ。思い切り可愛がってやる。だがもうルルド王子とは呼ばないからな」
ルルドの髪をくしゃりと乱暴に撫でると、シーグルは踵を返した。
「じゃあな、ルルド王子」
目眩がしそうになり、ルルドは後ろに手をついて眼を閉じた。
セシーリアとシーグルの言葉がグルグルと頭の中を巡る。
『明日、このラティアに生まれなさい。このラティアに生まれて、皆に愛されて幸せに生きるの』
『明日、お前がもしもラティアに生まれたら、お前は俺の弟だ。思い切り可愛がってやる』
セシーリアの真っ直ぐな瞳と、シーグルの優しい笑顔。
みるみるうちに、ルルドの身体が熱をおび始める。
一人残された牢の扉はセシーリアが言うように開け放たれていて、一人として看守の姿が見えない。
ルアス帝国に生まれ落ちてから約十年あまり。
腫れ物のように扱われる日々と、まるで自分を道具のように見る父の眼差し。
皇族の血が流れていることだけが自分の価値だった人生。
「生まれよう、ラティアに」
ルルドは囁くようにこう呟くと、ゆっくりと眼を閉じた。
「……生まれたら……?」
子供らしい一面に、シーグルの唇に笑みが浮かぶ。
「明日、お前がもしもラティアに生まれたら、お前は俺の弟だ。思い切り可愛がってやる。だがもうルルド王子とは呼ばないからな」
ルルドの髪をくしゃりと乱暴に撫でると、シーグルは踵を返した。
「じゃあな、ルルド王子」
目眩がしそうになり、ルルドは後ろに手をついて眼を閉じた。
セシーリアとシーグルの言葉がグルグルと頭の中を巡る。
『明日、このラティアに生まれなさい。このラティアに生まれて、皆に愛されて幸せに生きるの』
『明日、お前がもしもラティアに生まれたら、お前は俺の弟だ。思い切り可愛がってやる』
セシーリアの真っ直ぐな瞳と、シーグルの優しい笑顔。
みるみるうちに、ルルドの身体が熱をおび始める。
一人残された牢の扉はセシーリアが言うように開け放たれていて、一人として看守の姿が見えない。
ルアス帝国に生まれ落ちてから約十年あまり。
腫れ物のように扱われる日々と、まるで自分を道具のように見る父の眼差し。
皇族の血が流れていることだけが自分の価値だった人生。
「生まれよう、ラティアに」
ルルドは囁くようにこう呟くと、ゆっくりと眼を閉じた。