ラティアの月光宝花

残酷な結末

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「遅いっ!」

「うわあっ!」

ザリッという音と共に、武術練習場の地面にルルドが倒れた。

仰向けに倒れたその喉元に、シーグルの突き下ろしたスティーダの切っ先が迫り、ルルドは眼を見開いて息を飲む。

「ま、まいった」

「まいった?!参りましただろーがっ!」

太陽を跳ね返したスティーダがギラリと光るものの、逆光でシーグルの表情は見えない。

「ま、いり……ました」

「よし」

ルルドはあまりの疲労に眼を閉じ、力の抜けた手のひらからスティーダが砂に落ちた。

それからゆっくりと退くシーグルの気配を感じ、思い切り息を吸いこむ。

先程まで燃えるように熱かった身体が、爽やかな風に撫でられ心地よい。

疲れ果てたものの爽快感が全身を包み、すぐにでも眠れるような気がした。

「いつまでひっくり返ってるんだ。起きろ」

その時である。

「シーグル!」

練習場の入り口付近からよく響く澄んだ声が響き渡り、シーグルはギクリとして一瞬動作を止めた。

その声を聞いたルルドが身を起こすと、たちまち甘えた声を出す。

「セシーリア!」

駆け寄るセシーリアよりも早く、ヨルマがルルドの元に到着し、その頬を舐める。

「ヨルマ、息が出来ないよ」

そう言いつつもルルドは、喉を鳴らす大豹に喜びを隠せない。

そんなルルドを見て、シーグルはケッと横を向いた。

「猫にまで好かれやがって。ガキは得だよな」
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