ラティアの月光宝花
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「さすがだな、うちのハヤブサは」
マルケルスがハヤブサの持ち帰った手紙の日付を確認すると、片方の唇の端を引き上げた。
わずか十三日にして、イシード帝国に潜入している密使のハヤブサがラティア城に到着したのだ。
「セシーリア、手紙を読め」
「うん」
アンリオンがハヤブサを肩に乗せたままセシーリアの手の中の手紙を見つめると、シーグルやマルケルスも唇を引き結んだ。
セシーリアはコクンと喉を鳴らし、マルケルスから渡された密使の手紙をゆっくりと広げる。
今更怯えることなどないわ。
地獄なら見た。
大切な人々を殺され、さらわれ、王都を焼かれた一年前、もう既に見たのだ。
セシーリアはクッと唇を噛むと、手紙の文字に視線を落とした。
……!
「セシーリア?セシーリア、平気か?」
シーグルの声に、セシーリアは反応できなかった。
パタリとセシーリアの左腕が下がり、それと同時に手紙が指の間をすり抜ける。
マルケルスは素早く手紙を拾い上げると、書かれている文字を眼で追う。
「なんと書いてあるんだ」
そんなマルケルスにアンリオンが近付き、手紙の中を覗き込む。
「……」
「マルケルス!」
真っ青なマルケルスに辛抱ならず、アンリオンは声を荒げた。
その声にようやくマルケルスが瞬きをし、息を吸い込む。
「……イシード帝国が……カリム皇帝がこちらに向かっているそうだ」
カリム皇帝が……!
マルケルスの掠れた声に全員が絶句し、立ち尽くした。
「さすがだな、うちのハヤブサは」
マルケルスがハヤブサの持ち帰った手紙の日付を確認すると、片方の唇の端を引き上げた。
わずか十三日にして、イシード帝国に潜入している密使のハヤブサがラティア城に到着したのだ。
「セシーリア、手紙を読め」
「うん」
アンリオンがハヤブサを肩に乗せたままセシーリアの手の中の手紙を見つめると、シーグルやマルケルスも唇を引き結んだ。
セシーリアはコクンと喉を鳴らし、マルケルスから渡された密使の手紙をゆっくりと広げる。
今更怯えることなどないわ。
地獄なら見た。
大切な人々を殺され、さらわれ、王都を焼かれた一年前、もう既に見たのだ。
セシーリアはクッと唇を噛むと、手紙の文字に視線を落とした。
……!
「セシーリア?セシーリア、平気か?」
シーグルの声に、セシーリアは反応できなかった。
パタリとセシーリアの左腕が下がり、それと同時に手紙が指の間をすり抜ける。
マルケルスは素早く手紙を拾い上げると、書かれている文字を眼で追う。
「なんと書いてあるんだ」
そんなマルケルスにアンリオンが近付き、手紙の中を覗き込む。
「……」
「マルケルス!」
真っ青なマルケルスに辛抱ならず、アンリオンは声を荒げた。
その声にようやくマルケルスが瞬きをし、息を吸い込む。
「……イシード帝国が……カリム皇帝がこちらに向かっているそうだ」
カリム皇帝が……!
マルケルスの掠れた声に全員が絶句し、立ち尽くした。