ラティアの月光宝花
「ダメだ!無茶はするな」

「お前が潰れたら元も子もないなだろう」

シーグルとマルケルスが口々にこう言ったが、セシーリアは首を横に振った。

それから新しい馬にまたがると手綱をさばいて馬の頭を返す。

「私は潰れないわ。カリムを討ち、オリビエをとり戻すまでは潰れたりしない」

「待てよ、セシーリア。それならなおの事、」

なだめるシーグルに耳を貸すことなく、セシーリアは馬の腹をクッと蹴り、走り出した。

「もう覚悟は出来てる。今がその時よ。行くわよ!」

マルケルスとシーグルは一瞬だけ顔を見合わせると、諦めたように手綱をさばいた。

****

最低限の休憩しか取らず、セシーリア達は馬を替えながら進んだ。

その結果、僅か七日でエシャードに到着するという偉業を成し遂げたのだった。

「ギルーザ様!セシーリア女王陛下がご到着なさいました!」

城門兵から連絡を受けた大臣ケルグがギルーザ・エシャードにこう告げると、ギルーザは力強く頷いた。

「ケルグ、この短時間でエシャードに到着したということは、セシーリア様はさぞやお疲れに違いない。気付け薬を用意してくれ」

「ハッ」

ギルーザはケルグの黒い瞳を見据えると、意思の疎通を確認して立ち上がった。

何をおいてもまず、セシーリア女王陛下を休ませねばならないとふたりは思った。

****

「行くわ、今すぐライゼンの軍に合流する!」

「ライゼン殿の兵は既に国境警備隊と合流し、ガムズ河の東に待機している。お前はまだ行かなくていいから休め」
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