ラティアの月光宝花
****
セシーリアとシーグルがライゼンの軍に合流したのは、エシャード城についてから三日後であった。
「マルケルス、状況は?」
一足早く到着していたマルケルスが額に手を当て、眼に当たる激しい風を避けながら口を開いた。
「第二弾のハヤブサによると、カリム皇帝は半日後国境に到着するらしい」
その言葉にセシーリアが頷く。
「他には?」
「わからない」
ガムズ河を越え東に広がる《黒色の原野》は、ラティアとイシードの国境である。
「そろそろイシードもこちらの動きを把握してるかもしれない」
「……いずれにせよイシードの要求は飲まない」
セシーリアの硬い声にマルケルスが答える。
「不思議なことにイシードの軍が確認できてないんだ」
シーグルが舌打ちし、かぶりを振る。
「軍が確認できない?!バカ言え!そんな事があるのかよ」
シーグルの言葉にマルケルスが声を荒げた。
「いや。軍を動かしてない可能性だってある」
その時、国境警備隊長が両手を高く掲げ、敵国の存在を知らせた。
「来たらしい。セシーリア、下がれ。ヨルマ、セシーリアを狙う者は咬み殺せ」
マルケルスの言葉を聞いたヨルマが、黒色の原野に身を落とした。
「見ろ。あの人数を」
小高い丘の上から見えるイシードの行列は、ほんのわずかな人間と数台の馬車であった。
野を見下ろすマルケルスが後方のライゼンに頷き、ライゼンは待機していた兵士達に合図を送った。
粒のようだったそれらが徐々に大きくなっていき、セシーリアの視界を占めていく。
セシーリアとシーグルがライゼンの軍に合流したのは、エシャード城についてから三日後であった。
「マルケルス、状況は?」
一足早く到着していたマルケルスが額に手を当て、眼に当たる激しい風を避けながら口を開いた。
「第二弾のハヤブサによると、カリム皇帝は半日後国境に到着するらしい」
その言葉にセシーリアが頷く。
「他には?」
「わからない」
ガムズ河を越え東に広がる《黒色の原野》は、ラティアとイシードの国境である。
「そろそろイシードもこちらの動きを把握してるかもしれない」
「……いずれにせよイシードの要求は飲まない」
セシーリアの硬い声にマルケルスが答える。
「不思議なことにイシードの軍が確認できてないんだ」
シーグルが舌打ちし、かぶりを振る。
「軍が確認できない?!バカ言え!そんな事があるのかよ」
シーグルの言葉にマルケルスが声を荒げた。
「いや。軍を動かしてない可能性だってある」
その時、国境警備隊長が両手を高く掲げ、敵国の存在を知らせた。
「来たらしい。セシーリア、下がれ。ヨルマ、セシーリアを狙う者は咬み殺せ」
マルケルスの言葉を聞いたヨルマが、黒色の原野に身を落とした。
「見ろ。あの人数を」
小高い丘の上から見えるイシードの行列は、ほんのわずかな人間と数台の馬車であった。
野を見下ろすマルケルスが後方のライゼンに頷き、ライゼンは待機していた兵士達に合図を送った。
粒のようだったそれらが徐々に大きくなっていき、セシーリアの視界を占めていく。