ラティアの月光宝花
カリムはどこ?カリムは。
次第に強さを増す鼓動を感じながら、セシーリアは両目を細めた。
「……いたぞ」
呟いたシーグルと、セシーリアの瞳に写ったその人物。
「カリム……!」
あれだ。面頬(めんばお)で両目は隠れているが、一際立派な馬具を見るとあれがカリムに間違いない。
鬣(たてがみ)に派手な絹紐を編み込んだ白馬の上の皇帝カリムは、鋼の胸当てしか着けておらず、戦うには軽装である。
セシーリア達が見つめる中、やがてカリムは片手を上げて一行を止めると、口元を覆った一人の護衛兵のみを従えラティア側へと数歩進んだ。
国境を挟んで向かい合った両国に、原野を吹く風に乗ったカリムの声が響く。
「セシーリア女王。思いがけない再会に感謝する。それから」
《思いがけない再会》などと言いながら、イシードの行動を把握して国境に駆けつけたセシーリアに驚きもしないカリムは、非常に落ち着いた声で先を続けた。
「お話の前にこちらを」
カリムの声に、後方に従えていたイシードの者達が国境まで進み出た。
たちまちラティアの兵士達が彼らに弓を構える。
それを見たカリムが、
「危害は加えぬ」
ライゼンが右手を上げて兵士の動きを止めると、イシードの使者が再び歩を進める。
彼らによって担がれ国境まで運ばれた箱のようなそれは、立派な刺繍が施された布で覆われており中身は見えない。
「……なんだあれは。貢ぎ物か?」
「……分からないが兵を従えもせずやって来たところを見ると、ラティアに友好を求める為の献上品かもな」
次第に強さを増す鼓動を感じながら、セシーリアは両目を細めた。
「……いたぞ」
呟いたシーグルと、セシーリアの瞳に写ったその人物。
「カリム……!」
あれだ。面頬(めんばお)で両目は隠れているが、一際立派な馬具を見るとあれがカリムに間違いない。
鬣(たてがみ)に派手な絹紐を編み込んだ白馬の上の皇帝カリムは、鋼の胸当てしか着けておらず、戦うには軽装である。
セシーリア達が見つめる中、やがてカリムは片手を上げて一行を止めると、口元を覆った一人の護衛兵のみを従えラティア側へと数歩進んだ。
国境を挟んで向かい合った両国に、原野を吹く風に乗ったカリムの声が響く。
「セシーリア女王。思いがけない再会に感謝する。それから」
《思いがけない再会》などと言いながら、イシードの行動を把握して国境に駆けつけたセシーリアに驚きもしないカリムは、非常に落ち着いた声で先を続けた。
「お話の前にこちらを」
カリムの声に、後方に従えていたイシードの者達が国境まで進み出た。
たちまちラティアの兵士達が彼らに弓を構える。
それを見たカリムが、
「危害は加えぬ」
ライゼンが右手を上げて兵士の動きを止めると、イシードの使者が再び歩を進める。
彼らによって担がれ国境まで運ばれた箱のようなそれは、立派な刺繍が施された布で覆われており中身は見えない。
「……なんだあれは。貢ぎ物か?」
「……分からないが兵を従えもせずやって来たところを見ると、ラティアに友好を求める為の献上品かもな」