ラティアの月光宝花
背格好は……身体の水分が抜けているためか些か小さい。
「確認には俺達全員で立ち会おう」
無理矢理に怒りを抑えて口を開いたマルケルスを、セシーリアがゆっくりと見上げる。
……確かにそうだわ。
私達……幼い頃から共に育ってきた私達が立ち会わなければ、誰がこの亡骸をオリビエだと確認できるのか。
オリビエの身体には腐敗を防ぐために薬品処理がなされ、アマ布が巻かれている。
セシーリアはそれを再び見つめながら苦痛に顔を歪めた。
もう見ることが出来ないのだ、あの美しかった榛色の瞳を。
もう聞くことは叶わないのだ、あの艶やかな声を。
もう二度と。
もう、一生。
「セシーリア。お前は無理するな。俺とシーグルで立ち会うから」
「そうだ、お前は見なくていい。お前に今の兄さんを見せるのは酷だ」
何とか冷静になろうとしつつ、自分を気遣うマルケルスとシーグルに、セシーリアは胸を突かれた。
きっと骨格がむき出しになったオリビエの皮膚にはもう、生前の面影はないだろう。
それを見て辛いのはシーグルやマルケルスも同じだ。
セシーリアは棺から身を起こしてしっかりと姿勢をただすと、二人を見上げてゆっくりと口を開いた。
「ありがとう。でも私も立ち会うわ。オリビエかどうか、しっかりと自分の眼で確かめたいの」
シーグルはこのセシーリアを一生忘れないだろうと思った。
こんなにも黒いマラカイトグリーンの瞳を、今までに見たことがなかったのだ。
「確認には俺達全員で立ち会おう」
無理矢理に怒りを抑えて口を開いたマルケルスを、セシーリアがゆっくりと見上げる。
……確かにそうだわ。
私達……幼い頃から共に育ってきた私達が立ち会わなければ、誰がこの亡骸をオリビエだと確認できるのか。
オリビエの身体には腐敗を防ぐために薬品処理がなされ、アマ布が巻かれている。
セシーリアはそれを再び見つめながら苦痛に顔を歪めた。
もう見ることが出来ないのだ、あの美しかった榛色の瞳を。
もう聞くことは叶わないのだ、あの艶やかな声を。
もう二度と。
もう、一生。
「セシーリア。お前は無理するな。俺とシーグルで立ち会うから」
「そうだ、お前は見なくていい。お前に今の兄さんを見せるのは酷だ」
何とか冷静になろうとしつつ、自分を気遣うマルケルスとシーグルに、セシーリアは胸を突かれた。
きっと骨格がむき出しになったオリビエの皮膚にはもう、生前の面影はないだろう。
それを見て辛いのはシーグルやマルケルスも同じだ。
セシーリアは棺から身を起こしてしっかりと姿勢をただすと、二人を見上げてゆっくりと口を開いた。
「ありがとう。でも私も立ち会うわ。オリビエかどうか、しっかりと自分の眼で確かめたいの」
シーグルはこのセシーリアを一生忘れないだろうと思った。
こんなにも黒いマラカイトグリーンの瞳を、今までに見たことがなかったのだ。