ラティアの月光宝花
一体いつまでこうしていればいいの?

いつになったらカリムを討てるの?

いつになったら安心して眠ることが出来るの?!

先が見えず身体が焦げそうだ。

セシーリアはマルケルスに気付かれないように大きく息を吸うと、それを静かに吐き出しながら眼を閉じた。

****

数週間後、セシーリアの元にアルディンがラティア帝国エシャードへ帰還したとの知らせが届いた。

エシャードに帰還ということはおそらく、本陣に到着した筈である。

それは予定よりも早く、セシーリアにとっては思いもかけない嬉しい知らせであった。

「シーグル!アルディンに会った?!今どこにいるの?!」

セシーリアはいてもたってもいられず声を張り上げる。

その声に、大木に背中を預け仲間と談笑していたシーグルは僅かに喉を動かした。

「シーグル。アルディンは?」

「……さあな」

交代の兵達が任務へとつくために散る中、シーグルは短く言葉を返すと唇を引き結んだ。

腕を組んだままゆらりと身を起こしたシーグルに、セシーリアが手を伸ばす。

「さあなって、まだ会ってないの?」

「ああ。姿も見てない。帰った事も知らない」

「……でも、」

「悪いが俺は忙しいんだ。また後でな」

ポン、と一瞬だけセシーリアの頭に手を乗せると、シーグルは踵を返し一番近くにいた兵に声をかけ、連れ立って行ってしまった。

……なによ。変なの。

さっき本陣を覗いた時にはマルケルスも出掛けてしまっていて留守だった。

でも……もう一度行ってみよう。

セシーリアは納得できない思いを抱えながら小さく息をついた。
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