ラティアの月光宝花
いつでも挑戦し、強く逞しいセシーリアをシーグルは眩しく思った。

帝国の民はこぞってセシーリアを『ラティアの薔薇』と呼ぶけれど、俺に言わせればこの人は薔薇よりも美しい。

セシーリア……。

「さあ、シーグル、ララを食べに行くわよ!」

とびきりの笑顔でこちらを見たセシーリアに、シーグルは全身がカアッと熱くなった。

「う、うん!」

セシーリアの伸ばした手をギュッと握ると、シーグルは大きく頷き、立ち上がった。

このときのシーグルは、この日が自分にとって意味のある日になる事をまだ知らなかった。


*****

相変わらず街は活気付いていて、セシーリアとシーグルは胸が踊った。

屋台で食べたララは笑いが出るほど美味しく、巴旦杏の密割りは堪らなく濃厚であった。

「シーグル、せっかくだからなにかお揃いのものを買いましょう」

「うん!」

セシーリアがそう言いながらひしめき合う店に眼をやると、丁度銀細工の店が眼に入った。

「うわあ……綺麗だ」

「ほんとね!」

その時眼の端に見慣れた人物が写った気がして、セシーリアは狭い路地に眼を向けた。

あれは……オリビエ?

その後にアンリオンとマルケルスが続くのを見て、セシーリアはやはり先頭がオリビエだと確信した。
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