ラティアの月光宝花
三人とも……あんなに狭い路地に入ってしまうなんて、どうして?

とてもじゃないけど、店屋があるとは思えないわ。

セシーリアの心に、押さえられない好奇心が芽生えた。

何処に行くのか突き止めてやるわ。

「シーグル、少しここで待ってて。絶対に動くんじゃないわよ」

「え、どこにいくの?」

「ちょっとね。いい?絶対に動かないでね」

「……わかった」

シーグルに念を押すと、セシーリアは今しがたオリビエ達が消えた路地へと向かった。

路地の中は大通りの明るさが嘘のように暗く、驚くほどに狭い。

「一体こんなところになにがあるの?」

思わず眉をひそめてそう呟いた時、三人が不意に足を止めた。

建物の出っ張りに身を隠し、セシーリアが注意深く三人の姿を見つめていると、どうやらそこは一軒の店の入り口のようで、弱々しいあかりが灯っている。

……こんな狭い所に店?

オリビエ達はドアを叩く様子もなく、吸い込まれるように壁の間に消えた。

胸がドキドキする。

もしかして、賭博場?酒場?

酒場は18歳から許されるが、賭博場はまだ入れない筈。

ここまで来たんだもの、確かめてやるわ。

セシーリアはドキドキする胸を押さえながら三人が消えたあかりの元へと急いだ。

そこにドアはなかった。

その代わりに狭い階段があり、セシーリアは音を立てないようにそれを上がった。

上がりきった先にあるドアを少しだけ開けると、真横に太った女店主が小さな椅子に腰かけていて、セシーリアを無遠慮に眺めた。
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