ラティアの月光宝花
「働きに来たのかい。経験は?」

やはり何かの店屋のようだ。

「えっと……」

セシーリアが話し始めた時、

「女将さぁん、ちょっと来て。お酒がぁ」

女将さんと呼ばれた目の前の女は、店の奥に視線を走らせてからセシーリアを見た。

「ちょっと待ってな」

お酒?やっぱり酒場なのね。

セシーリアは女将が席を立ったのをいいことに、反対側の狭い廊下を進んだ。

オリビエ達はどこかしら。

それにしても布で仕切られた部屋ばかりで中の様子は分からない。

その時、急に女性の声が聞こえた。

「オリビエ様……ああっ……」

……オリビエ?

「んっ……あ……」

甘く響く声と、荒々しい息遣い。

「……セシーリア、愛してる……」

ドキンと強く心臓が脈打ち、セシーリアは硬直した。

セシーリア……!?

「セシーリア、セシーリア」

間違いない。

この声はオリビエだ。

何が何だか分からず、セシーリアは息を殺してそっと布に手をかけると、僅かに出来た隙間から中を覗き込んだ。

そこに、オリビエがいた。

いや、オリビエだけではなかった。

蝋燭の頼りない光に照らされた部屋の中で、裸のオリビエが、透けるように白い肌の女を組み敷いて波のように動いていた。
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