ラティアの月光宝花
オリビエの左手は女の膝の裏に回り、片足を抱え上げるようにして淫らに身体を開かせている。

「ん、ああっ」

オリビエが突き動く度に女の口から甘美な溜め息が漏れている。

う、そ。

心臓を矢で射抜かれたような強い痛みと衝撃。

セシーリアに気付かないオリビエは、きつく眉を寄せ歯を食い縛っていて、その額からはいくつもの汗が流れていた。

セシーリアは、身体が二つに裂けてしまいそうだった。

蝋燭のあかりを含んだその汗が、セシーリアを深く傷つけた。

強い胸の痛みと悲しみで、思わず目眩がする。

「誰?」

ビクッとして眼を開けた時にはもう遅かった。

ハッキリとは覚えていないが、よろけたセシーリアの身体がどこかにぶつかったようで、その音に女とオリビエがこちらを見たようだった。

「セシーリア……!」

たちまちオリビエが大きく眼を見開き、動きを止めた。

セシーリアはもう、ここにいることなど到底出来なかった。

身を翻すと細い通路を走り、ドアに手をかけると一気にその先の階段をかけ降りる。

涙で前が滲み、ただでさえ暗い視界がまるで見えない。

「待ってください、セシーリア様」

なんて残酷なの、どうして!!

オリビエは……オリビエはここで女性を買っていたのだ。

しかもセシーリアという名の女性を。
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