ラティアの月光宝花
セシーリアはギリッと歯軋りすると、スティーダを両手で握った。

一方オリビエは、冷えた笑いを浮かべてスティーダを右手で持つと低く構えた。

どこまでも馬鹿にして……!

オリビエの利き手が左手であることを知っているセシーリアは、屈辱に震えた。

そんなオリビエを睨み据えたまま、セシーリアは斜めにスティーダを振り下ろす。

「ハッ!」

「遅い!」

鋭く響く硬い音と共に、セシーリアのスティーダはオリビエのそれによって大きく弾かれた。

「うっ!」

手放さなかったものの、手首に経験したことのない痛みが走り、セシーリアの顔が歪む。

その時、構え直す暇もなく、オリビエがセシーリアの身体の正面を突いた。

「きゃあっ!」

寸止めにも関わらず、セシーリアは大きく後ろに仰け反り、そのままひっくり返った。

背中に激痛が走ったが、それどころではない。

「フッ……」

「あっ!」

慌てて起き上がろうとしたセシーリアのスティーダを、オリビエが踏みつけた。

「いっ……!」

踏みつけられたスティーダと地面の間にセシーリアの手が挟まれ、ギリギリと痛む。

「参りましたか」

「…………」

オリビエの前髪が影を落とし、榛色の瞳がいつもより深い。

……悔しい。
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