ラティアの月光宝花
それから背中に広がる芝生の感覚と、自分に覆い被さるオリビエの熱い身体。

「……離して」

「ダメだ」

眼の前のオリビエの瞳が切な気に揺れ、セシーリアはギュッと胸が痛んだ。

……オリビエが……私を好きならいいのに。

でも、そうじゃない。

オリビエには好きな人がいるもの。

「オリビエ。今すぐどきなさい。あの店のセシーリアさんが悲しむわよ」

セシーリアがグッと睨むと、オリビエは苦しげに顔を背けた。

「彼女の事はどうでもいい」

「……え?」

意味がわからず、セシーリアはマジマジとオリビエを見つめた。

「彼女はどうでもいい」

信じられなかった。

オリビエがこんな事を言うなんて。

「最低だわ、オリビエ」

「最低でもいい」

吐き捨てるようにそう言うと、オリビエはセシーリアの髪を撫でた。

「この勝負はあなたの負けだ。これからは僕の傍を離れるのは許さない、セシーリア」

セシーリア様、じゃなくて……。

「君は僕に守られていればいい、これからずっと」

オリビエ……。

オリビエの少しだけ傾けた男っぽい頬を、備え付けられている蝋燭のあかりと夕日が照らし、セシーリアの胸はどうしようもない程激しく脈打った。

その時、

「誰かいるのですか?」
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