ラティアの月光宝花
薔薇園の世話係りであるラウラが、入り口から中に向かって声をかけた。

「…………」

「…………」

芝生に寝そべってセシーリアを抱き締めていたオリビエが、息を殺して視線だけを上げた。

「オリビ」

「シッ……」

……歩いて中まで入られたら、抱き合っているのがバレる。

「オリ……っ……」

えっ?!

嘘……。

セシーリアの唇がオリビエの唇で塞がれた。

驚いたセシーリアが掴まれていない片方の手でオリビエの胸を押すも、彼はビクともしなかった。

次第に頬がカアッと熱くなり、セシーリアは恥ずかしさのあまり眼を閉じた。

「空耳かしら。気のせいみたいね……」

ジャリッと土を踏みしめる音がして、ラウラが去っていく気配がした。

それなのにオリビエの口付けは終わる気配がない。

それどころかセシーリアの唇を味わうようにした後、それを舌で割り柔らかく舐めた。

たちまち深くなる口付け。

セシーリアの身体に経験したことのない、言い様のない感覚が走った。

徐々に全身が熱くなる。

怖くて、でもこの先に存在するものが知りたくて、セシーリアは思わずオリビエにしがみついた。

「……可愛い」

スッと離されたオリビエの唇から笑みが漏れ、その榛色の瞳が甘く瞬く。

「……セシーリアがうるさいから」

どうして……そんな顔をするの?
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