ラティアの月光宝花
優しくて、温かくて切ない顔。

なのに、あの暗い店のセシーリアにさんを『どうでもいい』などとと言う。

愛してるって言いながら彼女を抱いていたのに、オリビエは何故私に口付けなんかするの?

……オリビエは、一体どうしてしまったのだろう。

「オリビエ……大丈夫?どうしてこんな事するの」

「大丈夫じゃない。君がいけないんだ。もう僕から離れるのは許さない。いいね、セシーリア」

オリビエが、大きな手でセシーリアの頬を包んだ。

たちまちその心地よさが、セシーリアの胸を高鳴らせる。

ああ、なんと罪深いのだろう、私は。

恋人の存在を知りながら、こんなこと。

でも、でも私は……やっぱり私は、オリビエが好きだ。

この想いは止められない。

オリビエが誰を愛していようと、私はこの想いを消すことなど出来ない。

セシーリアは観念したように眼を閉じると、ポツンと呟いた。

「……分かった。もうオリビエから離れない」

切なくて苦しいのに甘い幸せが身体を包み込み、セシーリアは経験のないこの思いに混乱した。

怖い。

怖いのに、どうすればいいのか分からない。

「オリビエ、私、怖い」

「貴女は恐れなくていい。ずっと僕が守るから。さあ、帰ろう。送るよ」

立ち上がったオリビエにゆっくりと手を引かれて、セシーリアは身を起こした。

「何故だ」
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