ラティアの月光宝花
……オリビエとシーグルは兄弟だけど全然違う。

オリビエは控えめで地味だが、シーグルは活発で天真爛漫だ。

まだ幼いこともあり、ワガママも子供らしく可愛い。

「二人を足して二で割ると丁度いいんじゃないかしら」

浅瀬を流れる清流と、風にあおられた木々の葉は、思いの外声をかき消す。

それを知っているセシーリアは吐き捨てるようにそう言うと、大きく溜め息をついた。

*****

「まあ、姫様!また城を抜け出して河に行かれたのですか?!」

……なんでこんな所で女中長のメイヤと出会してしまうのかしら。

この狭い城門は、城内に勤務する使用人専用の門である。

城内に戻ってホッとした途端に見つかってしまうとは。

言い逃れできないこの状況にセシーリアがゴクッと喉を鳴らした瞬間、シーグルがメイヤに向かってニッコリと笑った。

「メイヤさんこそ、こんなところで何してるの?もしかして……門兵のうちの誰かに会いに来ていたりして……」

使用人専用の城門には、守衛兵が五人常駐している。

やだ、嘘でしょ?!

メイヤといえばお堅く、浮いた話なんて聞いたことがない。

チラリとシーグルを見ると、彼はこれで大丈夫と言わんばかりに得意気に畳み掛けた。

「父上が知れば、門兵の移動も……」

「バカを仰いますなーっ!!」

「……っ!!」

「……!!」
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