ラティアの月光宝花
穏やかに日々は流れていた。
「お父様。どうして次の私の誕生日は特別なのですか?」
側近達と共に、軍議の間と呼ばれている広間から出てきたばかりのラティア帝国国王は、セシーリアの輝くような姿を見て思わず眼を細めた。
……我が娘ながら、セシーリアは美しく成長したものだ。
『ラティアの薔薇』
誰が呼び始めたか定かではないが、正にセシーリアは薔薇のように美しい。
ラティア国王は、側近に手を上げて先に行くように促すと、セシーリアを抱き締めて笑った。
「我が愛娘、セシーリア」
セシーリアは父王の胸に額を押し付けて、愛する父を見上げた。
大好き、お父様。
ラティア帝国の王でありセシーリアの父であるロー・ラティアは、穏やかで情け深い王である。
皇帝という立場でありながらそうは名乗らず、ロー・ラティアは常に帝国の民と寄り添う王である。
そんなロー・ラティアは、国交の為に他国の王女を妻にめとるのが代々の常であるにもかかわらず、自国の娘、それも王都エルフで花屋を営んでいたアイリスを見初め結婚した。
若くして王となったロー・ラティアを、歳の離れた近隣諸国の王達の中には何かと軽んじる者もいたが、度々起こる隣国との小競り合いや同盟及び協定の見直しなどの際も、持ち前の人柄や側近たちの範疇を超えた叡智で何とか乗りきってきたのだった。
そんな王を民は尊敬し、その一粒種であるセシーリアを『ラティアの薔薇』と呼び愛している。
その無限の愛を承けて育ってきたセシーリアも、あと一ヶ月の後には成人となる。
ラティア帝国では男女とも20歳で大人と認められるのだ。
しかし王族に生まれた者としては、だから特別な誕生日というわけではない。
「お父様。どうして次の私の誕生日は特別なのですか?」
側近達と共に、軍議の間と呼ばれている広間から出てきたばかりのラティア帝国国王は、セシーリアの輝くような姿を見て思わず眼を細めた。
……我が娘ながら、セシーリアは美しく成長したものだ。
『ラティアの薔薇』
誰が呼び始めたか定かではないが、正にセシーリアは薔薇のように美しい。
ラティア国王は、側近に手を上げて先に行くように促すと、セシーリアを抱き締めて笑った。
「我が愛娘、セシーリア」
セシーリアは父王の胸に額を押し付けて、愛する父を見上げた。
大好き、お父様。
ラティア帝国の王でありセシーリアの父であるロー・ラティアは、穏やかで情け深い王である。
皇帝という立場でありながらそうは名乗らず、ロー・ラティアは常に帝国の民と寄り添う王である。
そんなロー・ラティアは、国交の為に他国の王女を妻にめとるのが代々の常であるにもかかわらず、自国の娘、それも王都エルフで花屋を営んでいたアイリスを見初め結婚した。
若くして王となったロー・ラティアを、歳の離れた近隣諸国の王達の中には何かと軽んじる者もいたが、度々起こる隣国との小競り合いや同盟及び協定の見直しなどの際も、持ち前の人柄や側近たちの範疇を超えた叡智で何とか乗りきってきたのだった。
そんな王を民は尊敬し、その一粒種であるセシーリアを『ラティアの薔薇』と呼び愛している。
その無限の愛を承けて育ってきたセシーリアも、あと一ヶ月の後には成人となる。
ラティア帝国では男女とも20歳で大人と認められるのだ。
しかし王族に生まれた者としては、だから特別な誕生日というわけではない。