ラティアの月光宝花
ラティア王族に生まれた者の成人誕生日というのは、初めて他国の王族、皇族に顔を見せる日であり、その中の王太子達から結婚相手を決めるという特別な役柄をもって臨む日なのだ。
「セシーリア。お前はあと一月の間に成人する。ラティアの王女として初めて、大陸の国々の王族皇族に姿を見せることになるのだ。この意味が分かるな?」
セシーリアは、ロー・ラティアを見上げたまま唇を引き結んだ。
「来賓の中から私の婿候補の王子と対面し、仲良くしろと?」
「……そういう事だ」
「お父様。そんなの嫌です」
ロー・ラティアは、愛娘の美しいマラカイトグリーンの瞳を見つめて苦笑した。
「お前の結婚はお前だけの問題ではない。私はラティア人の妻をめとった。そのために隣国と血縁関係を結んでおらず、今の国交は些か心許ない。国同士の友好関係を維持するためにお前が他国の第二以下の王子を婿に迎えるのは大切な事なのだ」
「けれどお父様、私だってお父様みたいに好きな人は自分で見つけたい。初めて顔を合わせる王子を好きになどなれません」
「セシーリア。お前は男ではなく女だ。私が退位した後、女王が統治する国を狙わぬ者などあるまい。隣国の王子を婿に取り、国との結び付きを強くしておかなければいつかこのラティアは侵略されるだろう」
女王が統治する国が、侵略されるですって?
「大丈夫ですわ、お父様。このラティアには優れた武人が沢山いるじゃありませんか。それに我が国を侵略しようものなら、守護神ディーアが悪に身を染めた輩を必ず退治してくれますわ」
ラティアの守護神ディーア。
ラティアは信仰の厚い国であり、民はその守護神であるディーアを崇め奉っている。
「このラティアが危機に陥った際には、必ず守護神ディーアが姿を現し皆を守ってくれたのでしょう?」
「セシーリア。お前はあと一月の間に成人する。ラティアの王女として初めて、大陸の国々の王族皇族に姿を見せることになるのだ。この意味が分かるな?」
セシーリアは、ロー・ラティアを見上げたまま唇を引き結んだ。
「来賓の中から私の婿候補の王子と対面し、仲良くしろと?」
「……そういう事だ」
「お父様。そんなの嫌です」
ロー・ラティアは、愛娘の美しいマラカイトグリーンの瞳を見つめて苦笑した。
「お前の結婚はお前だけの問題ではない。私はラティア人の妻をめとった。そのために隣国と血縁関係を結んでおらず、今の国交は些か心許ない。国同士の友好関係を維持するためにお前が他国の第二以下の王子を婿に迎えるのは大切な事なのだ」
「けれどお父様、私だってお父様みたいに好きな人は自分で見つけたい。初めて顔を合わせる王子を好きになどなれません」
「セシーリア。お前は男ではなく女だ。私が退位した後、女王が統治する国を狙わぬ者などあるまい。隣国の王子を婿に取り、国との結び付きを強くしておかなければいつかこのラティアは侵略されるだろう」
女王が統治する国が、侵略されるですって?
「大丈夫ですわ、お父様。このラティアには優れた武人が沢山いるじゃありませんか。それに我が国を侵略しようものなら、守護神ディーアが悪に身を染めた輩を必ず退治してくれますわ」
ラティアの守護神ディーア。
ラティアは信仰の厚い国であり、民はその守護神であるディーアを崇め奉っている。
「このラティアが危機に陥った際には、必ず守護神ディーアが姿を現し皆を守ってくれたのでしょう?」