ラティアの月光宝花
セシーリアもまたディーアを愛し、その神話を信じていた。

ロー・ラティアは、真っ直ぐな眼差しを向ける我が娘の純粋さを眩しく思いながら続けた。

「誕生大祭典で直ぐに結婚相手を決めろとは言わない。だが近頃は不可侵条約を結んでいるにも関わらず、国境付近の小競り合いが後を絶たない。同盟を結んだ国々も敵対国と新たな血縁関係を結び、いつ我が国との条約が反故になるやも知れん状態だ。セシーリア。お前は王女として婿を取らねばならないのだ。ラティア帝国の民のために」

国のため。

民のため。

セシーリアはこれ以上何も言えなかった。

父の顔を見ているのに、脳裏に浮かぶのはオリビエの顔ばかりであった。


*****

「いい?!マルケルス。今日一日は絶対にオリビエに見つかっちゃダメよ。私とエルフの街にいた事にしといてね」

「なんだよ、それ」

「独りで城下に降りないってオリビエと約束してるの」

マルケルスが鼻で笑った。

「もう子供じゃないんだから、オリビエだって怒らないだろ」

「バレたらマルケルスのせいにするわよ」

そう言われると少々具合が悪い。

何故ならマルケルスは、オリビエが新しい武器を考案しているのを知り、是非ともその設計図を見たかったからだ。

彼の機嫌を損ねてそれを見せて貰えなくなるのはどうしても避けたい。

それほどに、オリビエの武器に対する案は斬新で魅力的であるのだ。
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