ラティアの月光宝花
所狭しと訓練に励む男達の掛け声と立ち回る際に上がる砂煙に、セシーリアは圧倒されて眼を見張った。
これじゃあ……何処にいるのか分からないわ。
「ねえ、あなた」
セシーリアは水飲み場に歩を進めると、忙しそうに働く小柄な少年に声をかけた。
桶を手にこちらを振り返った少年は、驚いたようにセシーリアを見つめたが、セシーリアはフワリと微笑むと質問を続けた。
「ここに、シーグルという男の子がいるでしょう?彼はどこ?」
その時である。
地を這うような獣の唸り声が上がったかと思うと、男達の歓声が辺りに響き渡った。
瞬く間に、何か答えようとしていた少年の声がかき消される。
「誰が闘う?!」
「獣相手は骨が折れる。今日は俺、午前中に三試合も闘ったんだ。新人戦前の奴に譲るぜ」
声は聞こえるものの、人だかりのせいで何が起こっているのかは分からない。
セシーリアはただならぬ雰囲気を感じて、少年に質問した。
「何が始まるの?」
少年はセシーリアをぎこちなく見つめて口を開いた。
「所長が仕入れてきた手負いの豹と誰が闘うかだと思うんだけど」
手負いの豹……。
少年は続けた。
「もうすぐセシーリア王女の誕生大祭典があるだろ?その時に城にあがるグロディーゼ(剣闘士)の養成所がここに決まったんだ。王女の前で披露する剣闘が猛獣相手だと決まって……」
少年がそこまで答えとき、人混みが割れた。
これじゃあ……何処にいるのか分からないわ。
「ねえ、あなた」
セシーリアは水飲み場に歩を進めると、忙しそうに働く小柄な少年に声をかけた。
桶を手にこちらを振り返った少年は、驚いたようにセシーリアを見つめたが、セシーリアはフワリと微笑むと質問を続けた。
「ここに、シーグルという男の子がいるでしょう?彼はどこ?」
その時である。
地を這うような獣の唸り声が上がったかと思うと、男達の歓声が辺りに響き渡った。
瞬く間に、何か答えようとしていた少年の声がかき消される。
「誰が闘う?!」
「獣相手は骨が折れる。今日は俺、午前中に三試合も闘ったんだ。新人戦前の奴に譲るぜ」
声は聞こえるものの、人だかりのせいで何が起こっているのかは分からない。
セシーリアはただならぬ雰囲気を感じて、少年に質問した。
「何が始まるの?」
少年はセシーリアをぎこちなく見つめて口を開いた。
「所長が仕入れてきた手負いの豹と誰が闘うかだと思うんだけど」
手負いの豹……。
少年は続けた。
「もうすぐセシーリア王女の誕生大祭典があるだろ?その時に城にあがるグロディーゼ(剣闘士)の養成所がここに決まったんだ。王女の前で披露する剣闘が猛獣相手だと決まって……」
少年がそこまで答えとき、人混みが割れた。