ラティアの月光宝花
すると空が晴れるようにグロディーゼ達の輪が消え、代わりにスラリとした青年が豹の前に現れた。

「よし!皆さがれ!アルディンが豹と対決する」

たちまちのうちにグロディーゼ達がその場を離れ、彼らによって簡易の柵が張り巡らされる。

少年がセシーリアの腕を掴んだ。

「武器倉庫の露台からのがよく見える。おいで」

少年の後に付き、水汲み場のすぐ前の小さな建物の階段を登ると、視界が開けた。

「はじめ!」

野太い声と同時にグロディーゼのひとりがスティーダをひと振りし、豹の縄を切る。

アルディンは腰からグラデス(短剣)を引き抜くと呟くように言った。

「すぐに仕留めてやる」

柵の中で豹とアルディンが向き合い、互いに構える。

次の瞬間、豹が白い牙を剥き出したまま唸り声を上げてアルディンに飛びかかり、周りからは歓声が上がった。

豹の鋭い爪が、アルディンの頬に赤い線を描く。

「いけ!アルディン」

「心臓をひと刺しだ」

「いや、脚を切り落とせ!」

アルディンは手の甲で頬を拭うとニヤリと笑い、低い声で言い放った。

「火がついた。俺の番だ」

セシーリアはこれ以上見ていられなかった。

咄嗟に通ってきた部屋に引き返し、目についた弓矢を掴む。

斜めから狙わなければならないけど、届かない距離じゃないわ。
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