ラティアの月光宝花
「お前達は分かっているのですか。我が国の守護神であるディーアの化身が豹であることを」

グロディーゼ達は互いに顔を見合わせてから、ゲラゲラと笑った。

その中のひとりが大声でセシーリアに告げた。

「神話を信じるのは自由だが、俺達はグロディーゼ(剣闘士)だ。人間相手でも獣相手でも、闘うのが仕事なんだよ。お嬢ちゃんの博愛精神を押し付けるんじゃねえ」

セシーリアはこう言い放ったグロディーゼに敢然と言い放った。

「手負いの豹が相手とは、この国のグロディーゼもたかが知れてるわね」

「なんだと?!」

たちまちのうちにグロディーゼの瞳が苛立たしげに光った。

「待て、リヴラ」

アルディンは立ち上がると腕を水平に上げてリヴラを制した。

ことを荒立てれば王女の誕生大祭典での剣闘披露大会の出場権を白紙に戻されるばかりか、養成所が取り潰しになるかもしれない。

だが……ただ俺が場を収めても面白くないし、この生意気な少女の曇る顔を見たい気もする。

アルディンはセシーリアを振り返るとゆっくりとした口調で尋ねた。

「君の目的はなんだ?此処に何しに来た?」

「人を探しに来たの。でも今はその豹を助けるのが先。ここの責任者はどこ?話がしたいわ」

アルディンはフッと笑うと親指で自分を指した。

「責任者は俺だ。昨日ここを叔父に譲り受けた」

セシーリアがゆっくりと弓を下げた。

「なら話は早い。アルディン。私にその豹を譲って欲しい」
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