ラティアの月光宝花
アルディンもまたセシーリアから眼が離せないまま、彼女のマラカイトグリーンの瞳を見つめる。

この娘は……なにか凄いものを持っているのかもしれない。

「アルディン。約束通りこの豹は譲り受けるわ。それから」

セシーリアはグロディーゼ全てを見回すと、しっかりとよく通る声で告げた。

「騒がせて悪かったわ」

凛とした佇まいのセシーリアにグロディーゼ達は見惚れたが、慌てて張りめぐらせた柵を取り払い道を開けた。

「行きましょう。帰ったらお前の脚を手当てしてあげる。歩ける?」

豹がセシーリアを見上げてキュッと瞬きをした。

「待たれよ、勇敢な乙女」

豹を見て微笑んだセシーリアが養成所の門を出ようとした時、アルディンが声をかけた。

セシーリアが足を止めてアルディンをしっかりと見つめる。

「なに?」

「是非伺いたい。貴女の名を」

最初は名前を聞く気などアルディンにはなかった。

だがあっという間に豹を懐柔したその神格的な少女の名を、どうしても皆に知らしめたいという気持ちに駆られたのだった。

グロディーゼ達が静まり返ってセシーリアの答えを待っている。

参ったわね。

セシーリアは苦笑した。

……お忍びのつもりだったのに……仕方がないわ。
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