ラティアの月光宝花
そんなセシーリアに、甘えるようにヨルマが身体を擦り付ける。

「ヨルマ……私、お腹が減って死にそうだったわ」

その時、ヨルマがフッ顔をあげ、入り口に視線を走らせた。

その直後に明朗な声が響く。

「あの豪華な料理を目の前にして……それはさぞかし辛かっただろうな」

「ほら、持ってきてやったぞ、料理」

「セシーリア。誕生日おめでとう」

立て続けに声がして、セシーリアは慌てて身を起こした。

ヨルマが部屋の入り口に立つ三人に悠々とした足取りで近寄ると、一番先に足を踏み入れたマルケルスに額をすり付けた。

「アンリオン、マルケルス!」

それに……オリビエ。

セシーリアは、女中の置いていった大皿の中の豪華な料理を見た後、再び三人を見上げた。

「どうしたの?みんな揃って」

セシーリアの問いに、マルケルスがヨルマを撫でながらニヤリと笑った。

「なかなかお前と話す機会がなくて情報を伝えられなかったが、重要な話だ。よく聞け」

「え?」

セシーリアは意味が分からず、三人の前で首をかしげた。

「……なに?」

「まあ先に料理を食えよ。これから話すことは少し長くなる」
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