ラティアの月光宝花
そこに眼を付けたのがグロディーゼ闘技委員会と食肉業者で、山林で生計を立てている者を守る意味も含めて、猟師に生け捕りを条件とした駆除を依頼したのだった。
「じゃあ、今夜は熊が食えるな」
アンリオンがニヤリと笑ったのをマルケルスが呆れたようにチラリと見た。
「後で皆に振る舞われる。ちゃんと並べよ」
そこへ再び笛と打楽器の音が響き渡り、地を這うような猛獣の鳴き声が加わったかと思うと、興奮した観客の歓声が闘技場の温度を上げていった。
「聞いたか?今の鳴き声。酷くご立腹だぜ、リズの森の熊は」
アンリオンが、間もなく闘技場へ現れるであろう熊に向かってからかうようにこう言うと、オリビエが入場門に眼をやりながら口を開いた。
「リズの熊はそこいらの熊と同じじゃない。もう何度も木こりを襲い、人の味を知っている。しかも生け捕られ精神的抑圧を強いられてかなり怒りを溜め込んでるだろう。心してかからなきゃ怪我ですまないぞ」
オリビエが真顔で闘技場を見下ろすと唇を引き結んだ。
「さあ!間もなく闘技場へリズの大熊が入場します!そんな獰猛な獣に挑むのは……グロディーゼ養成所《エルフの風》の一番の稼ぎ頭、アルディン!」
アルディン……!
司会者のよく響く声がアルディンを呼んだ瞬間、ガラガラと音を響かせて鋼鉄の門がゆっくりと開いた。
そこへ、悠々とした足取りでアルディンが登場し、スティーダ(両刃の長剣)を持つ右腕を誇らしげに挙げた。
「アルディン様ーっ!!」
「負けないで!」
「アルディン!期待してるぜ!木こりを食らう悪魔を即刻退治してくれ!!」
「じゃあ、今夜は熊が食えるな」
アンリオンがニヤリと笑ったのをマルケルスが呆れたようにチラリと見た。
「後で皆に振る舞われる。ちゃんと並べよ」
そこへ再び笛と打楽器の音が響き渡り、地を這うような猛獣の鳴き声が加わったかと思うと、興奮した観客の歓声が闘技場の温度を上げていった。
「聞いたか?今の鳴き声。酷くご立腹だぜ、リズの森の熊は」
アンリオンが、間もなく闘技場へ現れるであろう熊に向かってからかうようにこう言うと、オリビエが入場門に眼をやりながら口を開いた。
「リズの熊はそこいらの熊と同じじゃない。もう何度も木こりを襲い、人の味を知っている。しかも生け捕られ精神的抑圧を強いられてかなり怒りを溜め込んでるだろう。心してかからなきゃ怪我ですまないぞ」
オリビエが真顔で闘技場を見下ろすと唇を引き結んだ。
「さあ!間もなく闘技場へリズの大熊が入場します!そんな獰猛な獣に挑むのは……グロディーゼ養成所《エルフの風》の一番の稼ぎ頭、アルディン!」
アルディン……!
司会者のよく響く声がアルディンを呼んだ瞬間、ガラガラと音を響かせて鋼鉄の門がゆっくりと開いた。
そこへ、悠々とした足取りでアルディンが登場し、スティーダ(両刃の長剣)を持つ右腕を誇らしげに挙げた。
「アルディン様ーっ!!」
「負けないで!」
「アルディン!期待してるぜ!木こりを食らう悪魔を即刻退治してくれ!!」