ラティアの月光宝花
剣奴王(けんどおう)として闘技場に君臨していた時代は終わり、革命を起こして自らが王となった今、それがすべて幻であったかのような錯覚を覚える。
剣奴であった自分は幻で、俺は王となるべくして生まれてきたのではないか。
簒奪者などと呼ばれるのは間違いで、真の皇帝は最初から俺だったのではないか。
皇帝になるべく血が、俺にはちゃんと流れていたのではないか。
軽い目眩を覚え、思わず眼を閉じた時、闘技場全体を揺るがすような拍手喝采が生まれた。
アルディンがスティーダを大熊の腕に深々と突き刺し、驚いた熊の身体を蹴ってそれを引き抜いたところだった。
深く地を這うような熊の絶叫が、更に観客の興奮を煽る。
熊の身体は黒く、血は見えなかったが、猛り狂うその姿が肉を裂かれた痛みを連想させた。
「アルディン!!」
「アルディンー!!ラティアの英雄!!」
「この分じゃラティアの守護神ディーアに求愛されるぞ!最大の名誉だ!」
ここで再び司会者の笛が鳴り、彼がラティア帝国の守護神ディーアが身に付けているとされる髪飾りを天にかざした。
「大熊に、感謝の祈りを」
痛みと血の匂いに、我を忘れきった大熊がアルディンに襲いかかる。
彼はそれを華麗にかわしながら、観客が大熊のために祈るわずかな時間を待った。
やがて、祈りを捧げた観客達が顔を上げ、司会者が羽飾りを地に振り下ろして威厳のある声を張り上げた。
「勇敢な大熊に、安らぎの眠りを!」
その言葉を聞き終えたアルディンが、スティーダを太陽にかざして叫んだ。
「プレーマーソーディ・ラティア!(我はラティアと共に)」
剣奴であった自分は幻で、俺は王となるべくして生まれてきたのではないか。
簒奪者などと呼ばれるのは間違いで、真の皇帝は最初から俺だったのではないか。
皇帝になるべく血が、俺にはちゃんと流れていたのではないか。
軽い目眩を覚え、思わず眼を閉じた時、闘技場全体を揺るがすような拍手喝采が生まれた。
アルディンがスティーダを大熊の腕に深々と突き刺し、驚いた熊の身体を蹴ってそれを引き抜いたところだった。
深く地を這うような熊の絶叫が、更に観客の興奮を煽る。
熊の身体は黒く、血は見えなかったが、猛り狂うその姿が肉を裂かれた痛みを連想させた。
「アルディン!!」
「アルディンー!!ラティアの英雄!!」
「この分じゃラティアの守護神ディーアに求愛されるぞ!最大の名誉だ!」
ここで再び司会者の笛が鳴り、彼がラティア帝国の守護神ディーアが身に付けているとされる髪飾りを天にかざした。
「大熊に、感謝の祈りを」
痛みと血の匂いに、我を忘れきった大熊がアルディンに襲いかかる。
彼はそれを華麗にかわしながら、観客が大熊のために祈るわずかな時間を待った。
やがて、祈りを捧げた観客達が顔を上げ、司会者が羽飾りを地に振り下ろして威厳のある声を張り上げた。
「勇敢な大熊に、安らぎの眠りを!」
その言葉を聞き終えたアルディンが、スティーダを太陽にかざして叫んだ。
「プレーマーソーディ・ラティア!(我はラティアと共に)」