ラティアの月光宝花
第三章
簒奪者の怒り
アンリオンはあからさまに眉間にシワを寄せて声の主……イシード帝国のカリム皇帝を見据えた。
「光栄でございます」
深々と頭を下げたアルディンに、カリムは唇を引き上げて笑い、言葉を返した。
「誉めたわけではない。ラティアのグロディーゼは……踊り子か?」
観客は先程の興奮をもて余しつつも、国賓であるイシード帝国の皇帝カリムの発言に何も言うことなど出来ず、ただ見守るしかなかった。
カリムはこう考えていた。
……見るところによるとこのラティアも、剣闘士の人気は確立されているようだ。
……なら……俺に勝算が。
「カリム皇帝陛下。我がラティアには、このアルディンなど足元にも及ばぬ程魅力的な踊り子が大勢おりますわ。今すぐご案内いたしましょう」
花のように微笑んだセシーリアに、カリムがニヤリと笑った。
「おお、これは失礼を申したかな。しかし生憎俺は踊り子に興味はない。……セシーリア王女、グロディーゼの闘いはいつ観られるのかな」
カリムのこの言葉に、アルディンが唇を引き結んだ。
辺りが一気に静まり返り、不穏な空気が漂う。
……どうしよう……どうしよう!!
セシーリアは内心焦りながら、何とか笑顔を保っていた。
父王であるロー・ラティアならいわれのない隣国の王の嫌味も上手くかわせただろう。
だがここにロー・ラティアの姿はなく、その右腕であるレイゲン・ドゥレイヴもいないのだ。
その時、オリビエが膝をついてカリムに頭を垂れた。
「光栄でございます」
深々と頭を下げたアルディンに、カリムは唇を引き上げて笑い、言葉を返した。
「誉めたわけではない。ラティアのグロディーゼは……踊り子か?」
観客は先程の興奮をもて余しつつも、国賓であるイシード帝国の皇帝カリムの発言に何も言うことなど出来ず、ただ見守るしかなかった。
カリムはこう考えていた。
……見るところによるとこのラティアも、剣闘士の人気は確立されているようだ。
……なら……俺に勝算が。
「カリム皇帝陛下。我がラティアには、このアルディンなど足元にも及ばぬ程魅力的な踊り子が大勢おりますわ。今すぐご案内いたしましょう」
花のように微笑んだセシーリアに、カリムがニヤリと笑った。
「おお、これは失礼を申したかな。しかし生憎俺は踊り子に興味はない。……セシーリア王女、グロディーゼの闘いはいつ観られるのかな」
カリムのこの言葉に、アルディンが唇を引き結んだ。
辺りが一気に静まり返り、不穏な空気が漂う。
……どうしよう……どうしよう!!
セシーリアは内心焦りながら、何とか笑顔を保っていた。
父王であるロー・ラティアならいわれのない隣国の王の嫌味も上手くかわせただろう。
だがここにロー・ラティアの姿はなく、その右腕であるレイゲン・ドゥレイヴもいないのだ。
その時、オリビエが膝をついてカリムに頭を垂れた。