ラティアの月光宝花
その相手が、このオリビエ・ドゥレイヴであることが嬉しい。

叩き斬ってくれるわ!

「死ぬ準備は出来たか?オリビエ」

「いつでも」

「オリビエ、剣奴は足を狙ってくる。気を付けろ」

別れ際にアンリオンがオリビエに声を掛けると、オリビエは唇を引き結んだまま頷いた。

それから後ずさり、距離をとった二人は互いを見据えた。

観客は、このあり得ない状況にただ困惑するばかりである。

「いざ!」

オリビエが剣を構えた瞬間、カリムが素早くオリビエのそれを狙い、叩き落とそうとした。

そこを上手くカリムの力を吸収して体を回転させると、オリビエは飛び上がってカリムの頭上にスティーダを振り下ろした。

カリムは表情ひとつ変えず、スティーダを両手で持つと額ギリギリのところで真横に構え、オリビエの攻撃を受け止めた。

それから同時にオリビエの太股を押すように蹴る。

剣奴上がりは伊達ではないようでカリムは想像以上に力が強く、オリビエは激しく後ろへひっくり返ると砂埃を上げた。

「オリビエ!」

空気を裂くようなセシーリアの声に、観客が我に返り、その中のひとりが叫んだ。

「プレーマーソーディ・ラティア!(我はラティアと共に!)オリビエ様ー!」

「プレーマーソーディ・ラティア!」

「オリビエ様ー!」

声が声に重なり合い、やがて皆の声が揃い始める頃、カリムは完全に剣奴へと戻っていた。

……我はラティアと共に?!バカ言え!国が何をしてくれると言うんだ。

国などが民を守ってなどくれるものか!!

カリムの身体全てが怒りに包まれた。

殺してやる……!
< 93 / 196 >

この作品をシェア

pagetop