ラティアの月光宝花
砂の上を転がって剣を避けるオリビエに、カリムはニヤリとした。

剣奴王であったカリムは、本能的に魅せる闘いをしようとする。

カリムは地を蹴るとオリビエの動きを予測し、全身の筋肉を使いながら渾身の力で地に長剣を突き立てた。

「っ……!!」

ザリッという音とともに、カリムによって半分沈んだ長剣が、逃れようとするオリビエの身体を否応なしに阻む。

カリムはそんなオリビエの胸を侮蔑の表情で踏みつけると、腰からグラデス(短剣)を引き抜いて突き立てた。

オリビエが歯を食いしばり、両手でカリムの足をどけると、何とか彼の胴を蹴り払う。

すると次に、カリムは腕を伸ばして地に突き立てていたスティーダを掴もうとした。

「くっ!」

オリビエはそれを許さず、突き立ててあったスティーダの中心を拳で殴った。

傾いたスティーダを取り損ねたカリムがバランスを崩すと、素早くオリビエはカリムの脚に自分の脚を絡ませて倒し、その身に馬乗りになる。

激しく殴られたカリムは、咄嗟に砂を掴むとオリビエの顔に向かって投げつけた。

反射的にオリビエは目を庇い、カリムはそんな彼を全力で跳ね退け、すぐに砂の上の長剣を足の甲ですくい上げて手中に納める。

一方砂の上に放り出されたオリビエは、両腕で身体を支えると後ろへ回転しながら数回跳び、立ち上がって長剣を構えた。

それから顔色一つ変えずにカリム目掛けて走り、斬り込む。

頭上で剣を水平にし、オリビエの攻撃を避けたカリムは、思わず奥歯を噛み締めた。

……なんだこの素早さは……!これだけで動いて、疲労を感じないわけないだろう?!
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