For You 〜 天使だった君に 最高のお返しを
ライブが終わってから、彼に感想を聞かれた。

「初々しかった」と答えると、彼は「上からだなぁ」と言って笑った。


しかし、さっきの歌っているときの笑顔とは違った。

別に、この笑顔が心から笑っていないとか、そういう意味ではない。


この笑顔も心から笑っているのだけれど、歌っているときの、心の奥までさらけ出した、隠すところの何もないあの笑顔とは違った。



そんなことを考えていたせいで、黙ってしまっていたらしい。

彼に「どうした?」と顔を覗き込まれた。

だから、焦って頭にあることをとっさに言ってしまった。


「また見に来たい」


突然合わせられた視線をすぐに外したから、彼の表情は見えないのに、それでも分かるほど彼は全身から嬉しさをこぼした。


「ウソ!?ホントに!?」


本当に感情の豊かな人だ。

こんなにも喜んでくれたら、こちらまで嬉しくなる。


犬がしっぽを振るみたいに喜んでいる彼に、次のライブの日時と場所を教えられて、その場は解散になった。
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