For You 〜 天使だった君に 最高のお返しを
「好きだ」
場違いすぎるその言葉に、意味を理解するのにたっぷり十秒はかかった。
嫌われたとばかり思っていたし、でも彼はこんなことでからかうようなことはしない。
そもそも、そんな空気ではない。
私は混乱した。
しかも、そんなこと言われるのは初めてだったのだ。
だから、何と答えたらいいか分からない。
まだ、左手首は掴まれたままだ。
さっきは掴まれたという事実だけだったが、今はその行動さえ、恥ずかしく思えてくる。
からかうなと言おうとしたが、彼の表情は真剣すぎて、そんな冗談を挟むような隙はない。
反面、少し嬉しくもあった。
初めてというのもあったし、実のところ彼のことを少し意識している節もあった。
いろんな感情が混じりあって、状況が理解しきれずに、また、彼の目からも解放されたくて、私はこくこくうなずくと、彼の手を振り払って逃げ去った。
これでは、オーケーしたのか断ったのか分からない。