For You 〜 天使だった君に 最高のお返しを
「軽音部…」
ドアの窓に貼られた落書きだらけの『軽音部』の張り紙。
うちの高校に軽音楽部が存在していることは知っていたけれど、部室はこんなところにあったのか。
誰が所属しているのかも知らない。
無縁すぎて今まで興味を持たなかった。
けれど、この賑やかな『軽音部』の張り紙を見たら、すごく楽しそうで、少し羨ましく思った。
彼がそのドアに手をかけると、あっさりと開いた。
鍵はかかっていないらしい。
「さあ、入って入って」
彼が私の手を引いて、中に入って行く。
「勝手に入って怒られないの?」
彼の手を引っ張って止めると、彼はきょとんとした顔でこちらを振り返った。
いくらセキュリティが甘いからといえ、部外者が出入りしていいものではないだろう。
すると彼は、私が思っていることを理解したのか、ああと言って笑う。
「俺、一応部員だよ」
言ってなかったっけ、彼はそう言って首を傾げた。
「そうなんだ」
知らなかった。
彼のライブには何度も言ったことはあるけれど、軽音楽部としての活動ではなく、彼個人の活動だった。
まあほとんど活動してないんだけどね!
彼はそう言っておおらかに笑った。
私は人生で一度も部活というものに所属したことはないからよく分からないけど、そんな緩いものなのだろうか。
でも、いろんな所に雑多に物が置かれた部室を見渡して、何となく納得が行くような気もした。
彼は私を部室内に引き入れ、部屋の真ん中に一脚だけ置かれていた椅子に座らせた。
満足そうに頷いて、部屋の奥の方へ歩いて行く。
その流れで自然と離された手を、私はとても名残惜しく思った。
まだ手のひらに、彼の温もりと手の感触が残っている。
忘れまいと、手をぎゅっと握りしめた。
ドアの窓に貼られた落書きだらけの『軽音部』の張り紙。
うちの高校に軽音楽部が存在していることは知っていたけれど、部室はこんなところにあったのか。
誰が所属しているのかも知らない。
無縁すぎて今まで興味を持たなかった。
けれど、この賑やかな『軽音部』の張り紙を見たら、すごく楽しそうで、少し羨ましく思った。
彼がそのドアに手をかけると、あっさりと開いた。
鍵はかかっていないらしい。
「さあ、入って入って」
彼が私の手を引いて、中に入って行く。
「勝手に入って怒られないの?」
彼の手を引っ張って止めると、彼はきょとんとした顔でこちらを振り返った。
いくらセキュリティが甘いからといえ、部外者が出入りしていいものではないだろう。
すると彼は、私が思っていることを理解したのか、ああと言って笑う。
「俺、一応部員だよ」
言ってなかったっけ、彼はそう言って首を傾げた。
「そうなんだ」
知らなかった。
彼のライブには何度も言ったことはあるけれど、軽音楽部としての活動ではなく、彼個人の活動だった。
まあほとんど活動してないんだけどね!
彼はそう言っておおらかに笑った。
私は人生で一度も部活というものに所属したことはないからよく分からないけど、そんな緩いものなのだろうか。
でも、いろんな所に雑多に物が置かれた部室を見渡して、何となく納得が行くような気もした。
彼は私を部室内に引き入れ、部屋の真ん中に一脚だけ置かれていた椅子に座らせた。
満足そうに頷いて、部屋の奥の方へ歩いて行く。
その流れで自然と離された手を、私はとても名残惜しく思った。
まだ手のひらに、彼の温もりと手の感触が残っている。
忘れまいと、手をぎゅっと握りしめた。