高橋くん攻略法
まあ、だからといって、僕みたいの影の薄いゲームオタクをあんなリア充真っ只中の美少女が相手になんかするはずもなく、一度も話したことすらない。
いつも友達と楽しそうに話す前原さんのことは気になるけれど、それは彌生ちゃんと同姓同名だからってだけでそれ以上ではない。そりゃ、あれだけ可愛いのだから一度くらいはお近づきになってみたくもあるけど……。
「僕には無理だよなあ……」
一人ポツリと呟いた時だった。廊下の方からきゅっきゅっというリズムの良い足音と一緒に鼻歌まで聞こえてきたのだ。さっきまでのおめでたい思考が一瞬にして消え去り、僕は現実に引き戻された。
こ、こんなところ見られたら終わる。前原さんに付きまとうストーカーだとか、あらぬ疑いをかけられてしまうかもしれない。
慌ててプリントを拾い上げると、それを教壇の上に置いて急いでロッカーに向かおうとした。けれど、そんな時ほど、神様という存在はとてつもなく残酷だ。僕は不運なことに、机に足を引っかけて勢い良く顔面から地面に衝突したのだった。