高橋くん攻略法



 痛いやばい痛いやばい痛いやばい痛いやばい!!
 どうしてこんなことになってしまったのか、理解が追いつかない。ただ1つ分かっていることは、最悪の状況であることだけだ。
 この事態をどうするべきなのか。とにかく事実を告げて誤解であることを理解して貰わないと。まだじんじんと痛む体を何とか起き上がらせて、ゆっくりと顔をあげた。
 足元から順に、同じ学年指定のエンジ色のスリッパ、学園のマークがついた黒のハイソックスに包まれた細身の足、スカートから覗く太ももから膝までの綺麗なライン、折り曲げた白いカッターシャツの袖から覗く細い腕と小さい手、スカートの中に仕舞われたカッターシャツからでも分かるほっそりとした腰のライン、胸元の赤いリボン、そして肩口より少しだけ伸びた艶々の黒髪。彼女は確か、いつも前原さんと一緒にいる人。梶さん、だっけ。
 長いまつげに縁取られたクリクリの瞳が、僕を見てぱちくりとまばたきを繰り返した。僕は見とれる暇もないまま、慌てて声をあげた。


「ち、違うんだ!……これは決してやましいことをしてたわけじゃなくて!ただちょっと考え事をしてたというか……と、とにかく梶さんが考えてるようなことではないので!」


 僕の言葉に対して何も言わず固まっている梶さんに不安が段々と募っていき、僕は捲し立てるように言い訳を並べ立てた。けれど彼女の反応は未だにゼロ。僕はたまらず声を荒らげた。


「し、信じてないだろ!」


 そんな僕に梶さんは一言。


「いや、何も言ってないじゃん」


 それはそうだけど……!


「そ、その顔は絶対信じてない顔だ!」


 我ながら抽象的すぎる解釈に梶さんも困ったような呆れたような表情を浮かべた。

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