高橋くん攻略法
「ふんふふーん」
西山さんと別れてから上機嫌でスキップをしながら廊下を歩く。キュッキュッ、と学校指定の上履きとピカピカの廊下が擦れる音を響かせて教室の手前まできたあたりで中からガタガタと何かが崩れ落ちる音がした。
思わず足を止めて中を見てみれば、そこには同じクラスの高橋くんの姿。しかも机に足を引っ掻けて顔面から思いっきり転んだ後のオプション付き。まさか高橋くんったらドジっ子属性?なんて考えていたら声をかけるタイミングを逃してしまった。
すると唐突にムクリと起き上がった高橋くんが顔面を真っ赤に染めながら「ち、違うんだ!」と叫んだ。お?私何も言ってないけど何か言い訳し始めたから黙って聞いておこうかな?
「これは決してやましいことをしてたわけじゃなくて!ただちょっと考え事をしてたというか……と、とにかく梶さんが考えてるようなことではないので!」
「………」
「し、信じてないだろ!」
「いや、何も言ってないじゃん」
「そ、その顔は絶対信じてない顔だ!」
どんな顔だ。ツッコミたいことは山ほどあるけれど、とりあえず今の状況を整理してみよう。
高橋くんは私と同じクラスの男の子。普段は大人しくて真面目な印象。故に先生から呼び出しを食らうような生徒ではない。いつも放課後に残っているところを見たこともない。部活に入っているような様子もない。ともすれば何で教室なんかにいたのか?しかも私の登場に驚いて机に足引っ掻けたりなんかしちゃってさ。やっぱりただのドジっ子属性……?
「……あ」
そこで私は気づいてしまった。高橋くんが足を引っ掻けている机、それは窓際から三番目のよく知っている机だった。
ちなみに高橋くんの席は廊下側の一番前だ。
「高橋くんさ」
「な、何ですか」
警戒心満載の刺々しい声が返ってくる。私はそんなことは気にも止めず、一つの疑問をぶつけた。
「もしかして弥生のこと好きなの?」
それが、私と高橋くんの始まり────。