高橋くん攻略法



「な、何だよ弥生!いてーぞ!離せ!」
「いつもいつも私を(ないがし)ろにしてくるからたまにはこうして締め上げとないと、ってね!」


 ぐぐぐっと、より力を込められているのか佳祐が足だけでなく全身をバタつかせている。まるで陸にあげられた魚のような姿に思わず笑ってしまった。


「ギブギブ!ごめんって!」
「軽い!全てにおいて何か全部軽い!」
「わかんねーってそんなの!」
「わかりなさい、よ!」
「うぐぁ!死ぬ!」


 苦しそうにもがく幼なじみに哀れみの視線をおくることしかできない。なぜなら弥生は可愛い見た目とは裏腹に柔道で黒帯の実績をもつ有段者なのだ。ああなってしまえばもうお手あげだ。
 すまないと思いつつも傍観し続ける私に佳祐は涙目で助けを求めた。


「し、汐里……たす、けて……っ」
「あーごめん、私佳祐より弥生の味方だから」
「そ、そんなぁ……」


 あっさりと断った私に佳祐があうあうと口を震わせている。


「さあ覚悟しなさい佳祐!そして日頃の行いを改めると誓いなさい!」
「改めます!改めますからご勘弁を!」
「問答無用!」
「ぎぃやぁぁぁぁああああああああ!」


 その日、開け放たれた窓からは佳祐の最後の叫びがグラウンド全体にまで響き渡っていたそうだ。

< 7 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop