高橋くん攻略法
「ふー、すっきりした」
両手をパンパンとはたきながら弥生がすっきりとした表情で微笑んでいる一方で、その後ろでは生きる屍となった佳祐がぐったりとした様子で倒れ込んでいた。
何とも言えずその光景を眺めていると、ふと視界の端に見覚えのある眼鏡が見えた。入り口の前で少しだけ遠慮がちに此方を見つめる真っ黒の瞳と、顔の半分ほどを覆う大きな眼鏡といえば。
「高橋くん……?」
意外な人物の姿に思わず目を見開く。私に気づかれた高橋くんは一瞬びくりと肩を揺らしたもののその場から離れることはなく、ぎこちない動作で教室の中に入ってくると真っ直ぐに私の前までやってきた。
「あの……話が、あるんだけど」
「え、」
思いもよらないセリフに思わずポカンとしてしまった。そんな私の様子に幼なじみ二人は疑いの目を向けてきている。
まずい。高橋くんが弥生の攻撃なんか食らうハメになったら即死だ。
「で、できれば二人で話したい」
「あーうん、おっけーおっけー」
ぎこちないながらも何とか笑顔を浮かべて席を立つ。弥生の前を通りすぎる前に「ちょっと話してくるから先に帰っててー」といつも通りを装ってから教室をあとにした。