presquerien
「…会いたいか?」
繰り返した質問に、彼女は首を傾げた。
「…もうあの人は私を思い出してはくださいませんか?」
つまりは、輪廻の輪を外れたのか、そう聞かれているとわかった。
「いや、そんなことはない」
それこそ、神の与えた試練か。
地上の女神とまで神が称した女だ、彼女は。
そんな彼女の思い人は、ふしだらでどうしようもない男。
それをわからせたいが為の、神の意地悪とも思えた。
いや、それはないか。
そうであれば彼女を毎度酷い目に合わせたりしないだろう。
考えすぎだと神への忠誠心を忘れかけた自身の邪推を振り払った。
「アイル様はいつの時代も変わらないお姿ですね」
唐突な言葉に力が抜けた。
「俺は人間とは違う。この世界の理、時間に縛られない天上のモノだ。流れる時間が違うんだ」
同じモノでないと痛感させられる事実に、彼女は微笑んで見せた。