presquerien
今回の運命もまた、彼女にとって残酷と言えた。
それはあまりにも無情であるとも言える運命だった。
彼女の思い人、前世の名前を『シニアン』現世を『キュイ』と言う。
彼女も名前くらい聞いたことがあるかもしれない。
冷酷無慈悲な残虐王の名だ。
周囲の悲鳴に歓喜し殺戮の限りを繰り返す虐殺王が今の彼であった。
気に入らぬものは排除すると言う徹底ぶりに天上の悪魔ですら感嘆の声を漏らす程だ。
神はそんな彼を地上の悪魔と称していた。
そんな残酷極まりない男が果たして今回も彼女を思い出し改心してくれるかと思えど、その疑問は無駄とわかる。
彼女同様に、運命の輪に乗せられた男はアイルの存在を見て全てを想いだすことだろう。
そして考えるだろう、現世での彼女の利用価値を。
そういう男なんだ、昔から。
利益でしか他を測れない哀れな存在。
その汚い魂の本性を、彼女は未だ知らずにいた。
何度裏切られても何度利用されても変わらぬ愛を持ち、永遠を誓い続けた。
そのあまりにも純粋な思いに、神が彼女をどう称しているかなど知るはずもないだろう。