presquerien
吐息


 それは、現実であると疑いたくなる事実であった。

 まさかと疑いたくなる事実。

 残虐王は現れた彼女を見ることもなく、門前払いしたのだった。

 部下達が彼女を追い返す。

 会いたいなどと図々しい。

 一国を総べる王であるぞと王たる言葉を発せられたとのこと。

 彼女の瞳が悲し気に揺れ、まさか会う事すら出来ないのかと絶望に満ちたのがわかった。

 偉い立場なのは重々承知の上であった。

 身分違いであるとわかっていた。

 それでも連れてきたんだ、永遠の輪にいるからこそ。

 見れば一目でわかる、魂の振れるその存在が。

 だが、会う事すら出来ないのではどうしようもなかった。

 脱力した彼女の身体を、追い払う兵士を想わず睨み、記憶を書き換えてやろうとも思ったが、彼女から制された。

 「…いいんです。アイル様」

 そう言われ、手を下した。

 邪魔だと兵士に追い返された。

 大きく広い城の王がどれ程偉くとも所詮は神の足元にも及ばぬ。

 それでもこの世界ではその常識は伝わらない。

 神の補佐たるアイルでさえ、地上の王様には逆らえなかった。

 
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