presquerien

 渋々城に背を向けた。

 あからさまに落ち込む彼女にかける言葉がなかった。

 「…ハバナ!」

 アイルにはかける言葉はなかった。

 振り返らない彼女。

 震えていた。

 魂が揺れるのが、見えた。

 思わず振り返った先、高い高い城のてっぺんから身を乗り出す若い男がいた。

 その声、その姿が変わっても、変わらない思い。

 輪廻の輪が再び鈍い音を出し動き出したかのように感じた。

 暴虐の限りを尽くす残虐王と称される男は今、過去の思い人の存在を見つけ運命の輪に乗った。

 彼女の心臓の音が聞こえた気がした。

 止まっていたのではないかと思う程に、彼女の鼓動がやけに早く感じた。

 わかっていた事実、変わらぬ事実、それは不偏の運命。

 輪廻とはつまり繰り返す運命、変わらない、不偏であり続ける。

 どこにいても見つける、何度だって巡りあう。

 かつて、彼がそう言っていたのを思い出した。

 
< 16 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop