presquerien
渋々城に背を向けた。
あからさまに落ち込む彼女にかける言葉がなかった。
「…ハバナ!」
アイルにはかける言葉はなかった。
振り返らない彼女。
震えていた。
魂が揺れるのが、見えた。
思わず振り返った先、高い高い城のてっぺんから身を乗り出す若い男がいた。
その声、その姿が変わっても、変わらない思い。
輪廻の輪が再び鈍い音を出し動き出したかのように感じた。
暴虐の限りを尽くす残虐王と称される男は今、過去の思い人の存在を見つけ運命の輪に乗った。
彼女の心臓の音が聞こえた気がした。
止まっていたのではないかと思う程に、彼女の鼓動がやけに早く感じた。
わかっていた事実、変わらぬ事実、それは不偏の運命。
輪廻とはつまり繰り返す運命、変わらない、不偏であり続ける。
どこにいても見つける、何度だって巡りあう。
かつて、彼がそう言っていたのを思い出した。