presquerien
瞳を見開き、全てを思い出した彼女の行動は一応に同じ。
ありがとうと震え、この運命を受け入れる。
何度目だろうか、その運命を見届けるのは。
今回の彼女もまた、瞳を伏せ記憶の波に脳を預けた。
冷たい金属の柵に手を振れ、今の自分を受け入れるその姿を例える言葉を彼は持ち合わせていなかった。
何通りの言語を習得しようとも、彼女の美しさを表すことが出来ないでいた。
未だかつて、彼女よりも美しいモノに触れてこなかった。
「…ありがとうございます」
幸福をかみしめるその姿に、アイルは視線を逸らした。
相変わらず空気はまずく、土は乾いている。
囚われたその存在の無価値さすら変わらない。
それでも感謝するのか。
永遠と定められた運命に乗せられ、それでも喜ぶのか。
アイルはまた、彼女の前に現れたことを後悔した。
この後悔は実に何十回目か…。