気づいたら、好きでした。
ピンク色の秋の風

出会い

「だから、ここははっきり吹いて!」


あたしは切れ気味で後輩に言った。


すると、後輩はへーいと言ってめんどくさそうな顔をする。


あたしは思わずはぁーとため息をついた。


あたし、篠田凜音(しのだりんね)は中学2年生。


吹奏楽部に所属していて、チューバという大きな楽器を担当している。


そして今は、新しく入ってきた後輩、秋城大輝(あきしろたいき)にチューバを教えている。


チューバ、ユーフォニアム、コントラバスという3つの楽器から成り立っているのが低音パートで、ユーフォニアム担当3年のかな先輩を始め、ユーフォニアム3人、チューバ3人、コントラバス2人の計8人で活動しているのが低音パートだ。


全体の部員としては70人いる。


今年は1年生が多くて、結構嬉しいのだけれど…


「こういう人もいるからなー」


ちらと大輝の方を見る。


「なんすかその目は!」


先輩に対して怯えもせずに、普通に舐めた口をきいてくる。


ていうかなんであたし、後輩にこんな事言われなきゃいけないわけ?


「なんでもないですー!ほら、早く練習練習!」


最近のあたしは、この自由気ままな後輩に頭を悩ませていた。


猫背になって基礎練習を始める大輝を横目に、あたしはもう1度ため息をついた。
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