それならいっそ、黒になれ
夕陽に溶ける


濃い緑色に走る
頼りなく薄い、白色の線。


描いたのは下手くそな相合い傘。
並んだ名前は
『行村 と 八坂』



傾いた赤い日差しに彩られた
その文字にゆっくりと手を伸ばして、
不意に響いた鐘の音に
私は慌ててその陳腐なおまじないを
手のひらで拭った。



「なにやってるんだろ…」



呟いて
自嘲じみた笑いをこぼして
微かに残ったその痕に
ゆっくりと指を這わせる。

そして今度こそ、確かに
黒板消しでそれを消してしまった。



時計を確認すると6時45分。

白で汚れた右手を避けて
左手で鞄を持ち上げる。
そのまま誰もいない教室をあとにした。



途中にあった手洗い場で
白を流して、
目標の美術室へ向かう。

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