それならいっそ、黒になれ
「那智、今日はご機嫌だね?」
そんなに顔緩んでたのかな。
思いながら
隣を歩く春人くんに笑顔を向ける。
「そうかな?」
「そうだよ。
何年一緒にいると思ってるの?
那智の機嫌くらい、
すぐに分かるよ」
いつもの柔らかい笑顔で
そう言った春人くんに
ふわふわと浮いていた心を
強く掴まれたみたいな、
そんな痛みを感じた。
なんか
春人くんを騙してるみたい。
騙してる?
だって
やましいことがないなら
素直に言えばいいんだ。
『行村くんの写真を撮ることになって
嬉しかったの』
それを言わないのは、
どうして?
春人くんを騙したいから?
自分のために、
騙さなきゃいけないから?