それならいっそ、黒になれ
気まずくて
自分の爪先を見れば
不意に後ろから声がした。
「那智」
透き通るような、
不思議な響きを持つ少し低い声。
振り向けばすぐ後ろに
歩ちゃんがいた。
すっ、と私の隣に並ぶ。
「おはよう。
薗くんも、おはよ」
「おはよう、歩ちゃん」
「おはよう。
相変わらず立木さんって
僕のことオマケ扱いだよね」
苦笑いして、春人くんが言う。
それに綺麗な顔をキョトン、とさせて
歩ちゃんが返す。
「だって私の友達は那智で
薗くんは友達の彼氏だから。
私の友達じゃないし」
「一応クラスメートだけどね」
ああ、よかった。
歩ちゃんが来てくれて。
私が気まずく感じたこと、
春人くんにバレなくて。
よかった。