それならいっそ、黒になれ
「じゃあ、また明日」
「バイバイ」
言いながら
余熱に染まった右手を
ヒラヒラとふってみせる。
その小柄な身体が
可愛らしい家に消えていくのを見送って
自分も家の中へ入った。
「ただいま」
なんて、誰もいないけど。
私の両親は共働きで
帰りはたいてい10時過ぎだ。
ひとりっこの私はこの家にいつもひとり。
昔は寂しくて
よく泣いてたけど、もう高校生だし。
今も春人くんは
夜ご飯に誘ってくれるけど
幼なじみのままじゃいけないから。
だって
彼女が毎日、
彼氏の家で夜ご飯を食べるなんて
珍しいというか
まず、ない。
幼なじみならまだわかるけど。
真っ暗なリビングを無視して
2階の自分の部屋に入る。
さっさと制服から部屋着に着替えて
鞄から一眼レフを取り出した。